くも膜下出血とは
日本における脳卒中の発生率と死亡率は減少していますが、くも膜下出血の発生率はほぼ横ばいです。発生率は、人口10万人あたり平均15人と言われており、加齢と共に急激に増加します。特に70歳以上の女性の発生率は男性の2.9倍と高いです。
くも膜下出血は、くも膜という脳表面を覆う膜の下に存在する脳血管が切れておこる出血です。くも膜下出血の最大の原因は脳動脈瘤という脳血管にできた瘤(こぶ)の破裂です。
破裂してくも膜下出血を起こす前に診断された瘤を未破裂脳動脈瘤と言います。
くも膜下出血は脳卒中の中でも死亡率が高く、重篤な病気とされています。未破裂のうちに脳動脈瘤を診断して破裂を未然に防ぐことは、重篤な脳卒中の発症を防ぐためにとても重要です。
くも膜下出血の症状
くも膜下出血の症状は突然の激しい頭痛です。「これまで経験したことがない激痛」「突然バットで頭を殴られたような痛み」と表現されます。嘔吐や意識障害、血圧が上がるなども代表的な症状です。
脳動脈瘤から少量の出血があったものの一時的になんとか出血が止まっているときには、軽い頭痛しか症状を感じないことがあります。脳動脈瘤破裂の警告サインと言われ、くも膜下出血発症の前2週間以内に見られる危険な兆候です。顔面や眼の周りの痛みであることが多いため、片頭痛などと診断されることがあります。いつもと違う頭痛を感じたら脳神経外科専門医を受診することが大切です。
くも膜下出血の診断
MRI検査を行い診断します。MRA検査で脳血管を撮影し、脳動脈瘤の有無を診断します。
くも膜下出血と診断された場合には、直ちに連携する専門医療機関に紹介、搬送させていただきます。
未破裂脳動脈瘤とは
破裂してくも膜下出血を起こす前に診断された脳動脈瘤を未破裂脳動脈瘤と言います。
未破裂脳動脈瘤は通常は自覚症状がありませんので、脳ドックや頭痛の検査などで偶然発見、診断されます。脳動脈瘤のサイズが大きくなり眼の神経を圧迫すると、ものが二重に見えるなどの症状が現れることがありますが、通常は症状がありませんので、脳動脈瘤ができていることに気づきません。また、脳動脈瘤は自然に小さくなってなくなるということはありません。脳ドックで予め診断を受けることがとても大切と言えます。
未破裂脳動脈瘤の頻度(破裂の頻度)
未破裂脳動脈瘤の頻度は成人の2~4%と言われています。
日本の調査では、未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は0.95%です。
脳動脈瘤の大きさが大きいほど破裂率は高くなり、5mm以下では0.5%、5~10mmで1.2%、10mm以上になると1.5%と報告されています。
脳動脈瘤は脳内の血管のさまざまな部位にできますが、部位によっても破裂の危険性が違います。前交通動脈瘤、後交通動脈瘤、脳底動脈瘤は破裂率が高いと言われています。
未破裂脳動脈瘤の治療
未破裂脳動脈瘤と診断された場合には、瘤の大きさや形、くも膜下出血の家族歴などを考慮して治療方針を決めます。症状のない小さな脳動脈瘤の場合には定期的にMRI画像を撮って経過観察を行います。
未然に脳動脈瘤破裂予防の治療を行うことがふさわしいと考えられる場合には外科治療を行います。外科治療の目的は未然に脳動脈瘤の破裂(=くも膜下出血)を防ぐことです。
外科治療
外科治療には主に以下の方法があります。
開頭クリッピング術
頭の骨を外して(開頭)、脳動脈瘤を直接確認して、医療用クリップで脳動脈瘤の入り口を塞ぐ手術です。
脳血管内治療
足の付け根の血管からカテーテルという細い管を脳の血管まで誘導して、コイルやステントという医療機器を使って脳動脈瘤内を塞栓する手術です。
未破裂脳動脈瘤の外科治療は、部位、形、大きさ、脳血管の様子などからどの方法が最適か総合的に判断します。当院の院長は脳神経外科専門医かつ脳血管内治療の専門医でもあります。治療をすべきか、するならばどの治療が良いかお悩みの方はお気軽にご相談、ご受診ください。連携する専門医療機関をご紹介させていただきます。
破裂脳動脈瘤
脳動脈瘤の破裂の危険性は、現在喫煙している、女性、7mm以上の大きさであると高まると言われています。
破裂してくも膜下出血を起こした脳動脈瘤は外科治療の選択肢が限られてしまうことがあります。未破裂のうちに診断してくも膜下出血の発症を未然に防ぐことはとても重要です。
家族性脳動脈瘤
3親等以内の血縁者に発見された脳動脈瘤のことです。脳動脈瘤家系の遺伝形式や責任遺伝子は明らかになっていませんが、1親等の血縁者がくも膜下出血を発症した場合、その家族は4〜7倍くも膜下出血を生じる可能性が高くなると言われています。脳動脈瘤の家族歴がある方は脳動脈瘤の検査をおすすめします。