脳出血とは
脳の動脈が破れ、脳内に出血が起きます。脳内の損傷ですので、出血部位によっては生活の質(QOL)を著しく障害することになり、出血が大きくなり頭蓋内圧が上昇すれば生命をも左右する重篤な病気です。脳出血発症後の治療だけではなく、いかにして脳出血の発症と再発を予防していくかが重要です。
脳出血の原因
脳出血の約60%は高血圧性脳出血です。高血圧により血管壁にかかる血圧負荷が上がると血管壁が拡張していずれ破綻します。高血圧は脳出血の最大の危険因子です。
高血圧は脳出血、脳梗塞、くも膜下出血のいずれの脳卒中にも深く関係しています。血圧が高い方は、医師の指導に従って血圧の管理を心がけましょう。
高血圧以外に脳出血を起こす原因として、脳動静脈奇形や脳腫瘍などの脳の病気や、血友病や血小板減少症などの内科の病気があります。
高齢の方の場合は、脳アミロイド血管症によって脳出血を生じることがあります。脳アミロイド血管症では、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳血管壁に沈着し、血管の構造が破壊され、脳内に小さな梗塞巣や微小出血を生じます。微小出血は小さな脳出血ですが、時に大きな脳葉出血を生じることがあります。
脳出血の種類
出血部位は、大脳(76%)、橋(12%)及び小脳(12%)にみられますが、大脳出血の頻度が断然多いです。大脳出血には被殻出血、視床出血及び脳葉出血があります。
被殻(ひかく)出血
出血と反対側の手足の麻痺と感覚の障害が現れます。さらに意識障害があれば出血が大きいことを示しています。出血が大きいときには外科手術が行われます。
視床(ししょう)出血
出血と反対側の感覚障害や手足の麻痺のほか、瞳孔の反射の異常など目の症状が現れます。視床出血では通常、外科手術はせず、脳圧や血圧の管理が行われます。
脳葉出血
大脳皮質または白質と呼ばれる部位に出血します。頭頂葉次いで側頭葉に多く、こめかみの頭痛や運動麻痺、視野障害などを呈します。脳アミロイド血管症は脳葉出血の主要原因と考えられています。
小脳(しょうのう)出血
小脳は脳幹(大脳と脊髄をつなぐ器官)の後ろにあり、運動のバランス機能を担っています。小脳に出血が起きると、後頭部痛、嘔気、嘔吐、めまい、起立や歩行ができないなどの症状が現れます。意識障害があり脳幹の圧迫が心配される場合には外科手術が行われます。
橋(きょう)出血
橋は脳幹の一部です。脳幹は大脳から脊髄に至る全ての神経線維が通る場所ですので、橋出血では重篤な意識障害、呼吸障害、四肢の麻痺が生じます。脳圧や血圧の管理が行われます。
脳出血の初期症状(予兆)
脳出血の発症は、11~3月に多く、季節別では夏に少なく、冬に多いです。
症状は出血部位によって異なります。手足が動かしにくい、しゃべりにくい、歩けない、けいれん発作などです。脳出血が大きくなると意識の状態が悪くなることもあります。
脳出血の治療
脳出血の初期治療として、血圧管理、呼吸管理、頭蓋内圧を下げる治療が行われます。主に点滴による薬剤投与で治療が行われます。
出血により頭蓋内圧が上がり脳幹が圧迫されて命にかかわる状態になることが心配される場合には、外科治療が行われます。外科手術には2種類あり、頭蓋骨を外して(開頭)、手術用顕微鏡を使って出血を除去する開頭手術と、頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから神経内視鏡(長さ数ミリの細いカメラ)を挿入して出血を取り除く内視鏡手術があります。
脳出血の治療が必要な患者さんは、速やかに連携する専門医療機関をご紹介いたします。