もやもや病とは
もやもや病は、日本で最初に発見され、日本人により病名が命名されました。
脳内の内頚動脈という血管が徐々に狭窄・閉塞し、代わりに閉塞した血管の周囲に異常血管が発達します。この異常血管が煙のように「もやもや」した様子に見えます。
日本人をはじめとする東アジア人に多く、日本人の有病率(もやもや病を持っている人の割合)は人口10万人に対して約3~6人です。
家族発症が10%以上みられ、家族内で遺伝発生することがあり、近年もやもや病の原因遺伝子の解明が進んでいます。
もやもや病は女性に多い?何歳くらいに多い?
もやもや病は、男性よりも1.8倍女性に多く、10歳までの若年と30~40歳代の成人の2つの年齢層をピークに発症します。
もやもや病の初期症状(前兆)
もやもや病の症状は、患者さんの年齢によってさまざまです。初回発作の症状は、主に、脳の血流不足(虚血型)と、もやもや血管からの出血(出血型)の2つに分類されます。その他、一過性脳虚血発作型、無症状型、頭痛型があります。近年、MRI検査が普及したことで、もやもや病の症状が起きる前に無症状で見つかったり、頭痛だけの症状の患者さんが増えています。
虚血型もやもや病
内頚動脈が狭窄・閉塞するため、脳に供給される血液量が不足することで、手足のしびれ、意識障害、片麻痺などの脱力発作、頭痛、けいれんなどの症状が現れます。
ほとんどの場合が「一過性脳虚血発作」であり、しびれなどの神経症状は数分~数十分で改善する一方、稀に重篤化して脳梗塞になることもあります。
小児では、激しい運動、啼泣、ハーモニカ演奏、熱い食べ物を覚ます時などの過換気によって虚血症状を起こすことが多いです。症状は左右交代してみられることもあります。
出血型もやもや病
成人では、約半数が出血により突然発症します。出血は、脳内出血、くも膜下出血、脳室内出血など多様で、出血部位に応じて、意識障害、頭痛、言語障害などの症状が現れます。成人で、小児と同じように虚血発作で発病することもあります。
もやもや病の検査・診断
確定診断には、頭部MRI/MRA検査や脳血管撮影などの脳血管を評価する検査が必要です。これらの検査により、以下の特徴が明らかになります。
- 頭蓋内内頚動脈終末部を中心に狭窄または閉塞が見られる
- もやもや血管(異常な血管網)が脳血管撮影の動脈相で見られる
*内頚動脈の片側の異常であっても、もやもや病と診断されます。
さらに、脳血流の不足(虚血)の程度を判断するにはSPECT(スペクト:脳血流シンチグラフィ)という検査が必要です。
診断に脳血管撮影やSPECTが必要な場合には、連携医療機関をご紹介いたします。
もやもや病では数年の経過で内頚動脈の狭窄が進行したり、もやもや血管が発達したり、脳動脈瘤が新たに発生するなど、血管の状態が変化してくることがあります。定期的なMRI検査などで画像診断を継続して行うことが大切です。
もやもや病の治療
もやもや病の治療には、内科治療と外科治療があります。
内科治療は、虚血症状で発症した場合に抗血小板薬を内服します。もやもや病による症状がない場合や出血型もやもや病の場合には内服しません。
外科治療としては、脳内の血流を補うために頭蓋外内血行再建術が行われます。浅側頭動脈という頭皮を栄養する血管を脳内の血管に縫い合わせてつなぐ直接血行再建術と、脳の表面に血流が豊富な筋肉を密着させて血管の新生を促す間接血行再建術があります。
外科手術治療が必要かどうかは、症状、脳血管撮影やSPECT検査などの結果から総合的に判断します。
もやもや病の詳しい検査や外科治療が必要と思われる場合には、連携医療機関をご紹介いたします。