一過性脳虚血発作とは
一過性脳虚血発作(TIA)とは、「手足の麻痺など脳梗塞に似た症状が一時的に現れ、一定時間続き、24時間以内に自然に治るもの」と定義されています。24時間以内といっても、通常は1時間以内に症状が消えることがほとんどです。しかし、症状が消えても、画像診断で脳梗塞が発見されることがあります。症状が24時間以内に消えた一過性脳虚血発作の患者の約1/3に、頭部MRIの拡散強調画像(脳梗塞を最も早く診断する画像)で脳梗塞が見つかると言われています。
一過性脳虚血発作はどれくらいの割合で脳卒中になる?
一過性脳虚血発作は脳梗塞の前兆として注意する必要があります。
一過性脳虚血発作を起こした人の10~15%が3ヶ月以内に脳梗塞を起こすと報告されています。そのうち約半数が一過性脳虚血発作から48時間以内に脳梗塞を発症しています。
一過性脳虚血発作を早期に診断し治療を開始すると、その後の脳卒中の発症を80%軽減することができます。
一時的な症状であっても、確実な診断と早期治療により脳梗塞の発症を防ぐことが重要です。
一過性脳虚血発作の原因
塞栓性
頚動脈や脳の主幹動脈など太い動脈内に血栓ができ、その一部が剥がれて脳内の細い血管を塞いで、神経症状を引き起こします。血管を塞いだ血栓が解けると神経症状は消失します。
血行力学性
脳の主幹動脈に閉塞または狭窄があり、一時的な血圧低下などによって脳の血流が減少することで一過性脳虚血発作が起こります。血圧が回復すると症状は消失します。
心原性塞栓症
心房細動や心臓弁膜症などの病気によって心臓にできた血栓が、脳血管に詰まった状態です。重症な脳梗塞である心原性脳塞栓症と同じ原因ですが、血栓が小さくすぐに溶ける場合には一過性虚血発作となります。
一過性脳虚血発作の初期症状(前兆)
片側の手足の麻痺が最も多い症状です。ものが二重に見える、呂律が回らないなども一過性脳虚血発作の症状の可能性があります。
一過性黒内障とは
一過性黒内障(いっかせいこくないしょう)は、一過性脳虚血発作の重要な症状です。
片眼の視野が一時的に暗くなります。片眼の視野が灰色になる、霞がかかったように白い、などの症状が現れ数分で回復します。このような症状が数日のうちに繰り返されることもあります。このような症状を経験したら、眼の症状と同じ側の内頚動脈の狭窄や、心臓に血栓を作るような病気がないかきちんと調べることが脳梗塞の発症予防のために重要です。
一過性脳虚血発作の検査・診断
MRI検査、MRA検査、血圧測定、心電図検査、血液検査、頚動脈エコー検査などを行い、一過性脳虚血発作の原因を調べます。
一過性脳虚血発作の治療
一過性脳虚血発作の症状から特に48時間以内は脳梗塞の発症を防ぐことが大切です。脳梗塞の危険性を検査、評価してから抗血小板剤を内服します。症状が消えていても脳梗塞に準じて治療を行います。検査で頚動脈の狭窄や心臓の病気が見つかった場合はそれぞれの治療も併せて検討します。
脳梗塞の前兆かも…と思ったらまずご相談ください
医師の診察を受ける際には、どのような症状が、いつ起こり、どのくらい続いたのか正確に説明できるようにしておくことをおすすめします。また、症状が左右どちら側で起きたのかも重要です。一過性脳虚血発作、脳梗塞の診断は脳神経外科専門の当院にご相談ください。